・一人暮らしをしている親が自宅を売却して施設に入りたい、もしくは子供と同居したい。
・親が施設に入居することになったので、親名義の定期預金を解約して施設の入居費用に充てたい。
・施設に長年入居しており、今後自宅に戻る見込みがなくなったため、空家である自宅を売却したい。
・親の介護費用は親のお金(預貯金)でまかないたい。
認知症の発症により意思判断能力が乏しくなっていると売却そのものができません!
子供に贈与することもできません!
預貯金も口座凍結されます!
親を委託者兼受益者、子供を受託者として、信託契約を締結します。
親が認知症を発症した場合でも、子供が自宅の売却・賃貸が可能となります!
親の介護費用は親にお金(預貯金)でまかなうことができます!
不動産の売却時においては、信託契約を解除するのではなく、受託者は信託財産のまま売却します。登記手続きは「所有権移転及び信託登記抹消」となり、買主は通常の所有権として、不動産を所有することになります。署名押印するのは、受託者のみで委託者の関与は必要ありません。
不動産の売却代金も信託財産として、引き続き受託者が管理し、親の施設の入所費用や今後の生活費、医療費に充てることができます。信託を利用した財産管理の場合、親から贈与してもらったわけではなく、単に管理を委託されただけなので贈与税等の税金の発生もありません。
両親と長男の3人家族で父名義の自宅に両親が居住している場合
父と長男で信託契約を締結し、自宅や預貯金の処分管理権限を長男に与えます。
父の財産管理(認知症対策)のみを目的とする場合は、父死亡後に信託を終了させます。
相続財産は、母単独、母長男共有、長男単独のいずれかとなりますが、相続税もふまえて、事前に終了時の特定の帰属権利者を信託契約で定めておくこともできますし、通常の相続と同様に母と長男で協議で定めるとしておくこともできます。
➡最大のリスクは父が死亡時に母が認知症となっている場合です。
母が認知症となっている場合、帰属権利者の定めをしなかった場合、遺産分割をするには母に後見人をつけなければならず、後見にが選任された場合、母には法定相続分を相続させなければならなくなります。二次受益者を長男にしておいたとしても遺留分の問題が発生する可能性があります。
➡父死亡後の二次受益者を母にして長男が母の財産管理を行う設計にしておけば、母の認知症対策も可能です。父母双方の死亡で信託を終了させればよいです。
両親と長男の3人家族で父名義の自宅に両親が居住している場合(父には相続税がかからない範囲の財産しか保有していない場合)
父と長男で信託契約を締結し、自宅や預貯金の処分管理権限を長男に与えます。
父死亡後の帰属権利者を長男とし、父死亡により信託を終了させます。
母が認知症になっていたとしても母の関与は不要のため、長男の単独で相続が完了できます。但し、母に後見人を選任すると遺留分の問題が発生する可能性があります。
➡父が相続税がかかる財産を保有している場合、母の配偶者控除や小規模宅地の特例を利用する場合には、母を受益者として関与させないと節税はできません。
両親と長男の3人家族で父名義の自宅に両親が居住している場合
両親双方の認知症対策を兼ねる場合
父と長男で信託契約を締結し、自宅や預貯金の処分管理権限を長男に与えます。
父死亡後の第ニ受益者を母もしくは母長男の共有にし、信託を父死亡後も継続させます。
母が認知症になっていた場合でも引き続き長男が自宅の売却や預貯金の管理ができます。(母にも独自の財産がある場合、母とも別途信託契約を締結しておかないと母独自の財産については長男が関与できません。)
母死亡後に信託を終了させ、権利帰属者を長男にしておきます。
➡二次受益者を誰にするのか、どのような割合にするのか、どのように信託を終了させるかなどは相続税も考慮に入れて慎重に決める必要があります。
親が認知症になった場合に備えて、事前に子供名義に不動産を生前贈与(相続時精算課税を利用)しておき、親が施設に入居する際に、売却して売却代金を施設代金に充てるという方法もあります。
この手続きのデメリットは税金などのコストがかかることです。
①親から子への贈与登記
➡登録免許税が2%、不動産取得税が3~4%かかります。
②子から第三者への売却
➡不動産売却にともなう譲渡所得税がかかるケースが発生します。(子が所有する不動産売却なので、マイホームではなく、特例が受けられず、譲渡金額によっては、譲渡所得税が課税されます。)
③親の入居費用の支払い
➡不動産の売却代金は、子供の資産となるため、その売却代金を親の施設費用に充てた場合、金額によっては贈与税が課税されるリスクも発生します。
家族信託を利用して不動産を子へ変更する場合、登録免許税は0.3%~0.4%で不動産取得税もかかりません。その不動産を売却した場合、譲渡所得税の特例も受けられます。また、その売却代金を施設費用に充てる場合も、課税の問題は発生しません。
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